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(03-03)
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| はじめまして。私はとある国立大学に通う、中山美香と申します。国立大学に通っているといったって、別に大した大学じゃないですよ。近場で学費が安い大学を探したら、その大学しかなかったというだけの話です。でも私が学びたかった英文学だって、ちゃんと学べる環境が整っているし、教授だって友人だって、みんないい人ばかりだし。ただ少しだけ心残りなのは、サークル活動をやってる暇がないってことかな。でもうちの経済状況からみたら、早川さんの家に居候として居座ってしまっている身分だし、大学へ通ってるだけでも幸せって思わなきゃですね。 |
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| 今日から弟の隆が通う高校に、私の大好きな高校生ユニット、Tomorrow's Affair のふたりが転校してくるそうです。正直、羨ましいです。あのふたりの良さって、ぱっと見た感じは普通の高校生だからなかなか伝わらないような気もするんだけど、でもふたりともとても澄んだ目をしていて、音楽番組で歌っているときのふたりは、光を身にまとっているかのようで、とても輝いて見えるんですよ。ものすごく明るくて、暖かくて、ふたりを見ていると私はほっとした気分になるんです。こんな高校生、めったにいないだろうなぁ。 |
| 今日は私が今住んでいる早川家に Tomorrow's Affair のふたりが仕事の関係でやってくるそうです。早川さんにも奮発していただき、食材もいいものがたくさん手に入ったし、夕食は是非私の得意料理を食べていってもらわなきゃね。 |
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| 私が今歩いている道は、車も通れないような河原沿いのちょっとした小道。早川さんの家へ引っ越してきた日に見つけたんです。よく碧ちゃんがクロシロの散歩にも使うそうだけど、夕日がきれいで、川も赤く染まって、ものすごくゆっくりとした時間が流れているかのよう。 |
| その小道の脇にちょっとした丘のような場所があり、そこにはいくつかの小さな墓が並んでいて、そのうちのひとつの墓の前に、少女はしゃがみこみ、小さな声で歌を歌っていました。 |
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| 私はその少女が春日あすみちゃんであるとすぐに気づきました。どこか聴いたことがあるようなメロディーなんだけど、詩はまだ聞いたことがないものだなぁ。私は黙ったまますぐそばで聴いていると、やがてあすみちゃんは私の存在に気がついたようです。 |
| するとあすみちゃんはくるっと立ち上がり、あふれんばかりに食材が入った買い物バックを覗き込みました。 |
| 「こんにちは。・・・ひょっとして、隆君のお姉さんですか?」 |
| 「今日、隆君がね、お姉さんが得意のジャガイモ料理を作るだろうから、あれは食べてけって。そしたらそのバックにジャガイモがたくさん入ってて、お姉さん、隆君と目のところがどこか似てたから。」 |
| 「じゃがいもでわかっちゃったんだ。ところで、隆と仲良くなれそう?」 |
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| するとあすみちゃんは墓の前でもう一度手を合わせると、私と一緒に小道を歩き、早川さんの家へ行くことになりました。 |
| 「私ね、ずっと昔にママと二人でこの街に住んでたことがあるんだ。」 |
| 「そういえばあすみちゃんて、両親ともいないんだっけ?」 |
| 「うん。パパは私が生まれてからすぐ離婚しちゃったらしいから顔も覚えてないんだけど、ママは優しかった。だから私はこの街に来ると、まずママの眠ってるあの場所へ行くの。」 |
| あすみちゃんは寂しい思い出というよりも、懐かしい思い出を大切にしたいと思ってるかのようで、こんな風に私に話をするときも、どこか楽しそうでした。辛い思い出だって、この街にはたくさんあるのだろうに。 |
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| 「私、本当はママが死んだとき、同時に私も死んでるんじゃないかなって思うんだ。交通事故のあった日、ママの運転する車の助手席には私がいて、気づいたら病院の中で、ママの周りにいた人達がみんな泣いていて・・・。あれ、私はどこにいるんだろう?って。」 |
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| あすみちゃんはくすくすと笑い出しました。それを見てると私も何故かおかしくなってしまって、気づくと二人で一緒に笑っていました。そこにはテレビでみたままの彼女の笑顔があって、私はますます Tomorrow's Affair のファンになりそうです。 |
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| 私とあすみちゃんの前を、夕方の澄んだ風がすっと通り過ぎていきました。 |
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2007/12/31
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